塔 2009年2月号投稿歌

塔の2月号分の投稿歌です。

                                    • -


頷けばゆふぐれがくる 四肢という四肢を枯らしてして会う君は白

赤茶けた裸の腕が オレンジの家を抱きおり 西海岸は

だだ広き中華料理屋 くりかえし真広き部屋に立たされていて

目の裏に引っかかる背名 地に伏せる衝動に指を取り替えている

衆目の中言い募る 上司とふ性愛よりも無色の近さ

貧しさが蜂の巣のごと蜜を溜め 血を流すから進むひとよは

かなしみは限られた鉢のその向こう 盛られた月の皮弱くして

おもむろにスイッチいれる 棘を踏むあやうさは今過ぎゆくフィルム

光る川はもう渡らない 茫漠と数を増やしいる黒緬羊はも

何も言はぬものと心得 歩きだすまでは私の蜜を飲み干す