2010-01-01から1年間の記事一覧

絵本

したたかに と言われていた日が作られる 3人が読む絵本の世界引きさかれて居る時強き身振りしてひとは笑いぬ星撃つごとく沈黙のまま知られずにあるかたちに私を変えて抱き寄せていくぱちぱちと燃えいる枝に近づいて百舌は輝く現在の鳥

青い森

青い森に蜂がいるらしい 痛いのは嫌と云うと刺すやうなわたし等の代わりになつて流れゆく川はささやく これはなんなの踊り子のように黒猫は見つめ合い 許諾の鐘を鳴らさずに居る吾々は言葉の代はりに与えられ言葉となつて消えゆく 友よ

岩宿

温めている一瞬は分からなくなっているのかのやうな白い貝現実は言葉のようにひび割れる 酢はき粗目の舌が黙すままあじさいの歯が欠けている 灼けていく果肉の如く寝る美術館ただいまと云えば真水が流れ込み 黒い内張りの岩をひたしぬ彷徨の如く書物がやって…

投げ縄のやうでもありぬ われわれの水が蒸発する天の辺傘を畳む瞬間は濡れてもいい時間 怒りを隠せず立つ駅の端青い貝が死ぬ前のようにばらばらとビルの縁飾りがひかりを放つ立ち止まるひとは逃げ去る音楽で わたしの代わりに足をとどめるカーブする骨がすべ…

地下鉄

うつらうつらと丘を離れる 泣きながら新宿辺りで東に向かへ駅に鍵がかけられる音を聞きながら我等は事実に守られてゆくもう一枚の布団のように睡つてた 其処は私が近づいていく場所苛立つたまま駅を出る君の手が部屋から私の胸まで伸びて夜半寿司のかがやく…

臨海地区にて

風上に死の光る街 ダイブする君はうつむく幼き牧師生ぬるい泡立つジュース 夜を分けて君の気配に近づいてゆくふわふわと渡る夜の橋背の高いビルに隠れて目を閉じなさいブレストの乱暴者は何故罪を犯すのだろう 頬を弛緩させ

消失

天窓の外には俺が睡つてた 眩しい船が飛ぶ夜がくる逃げ水の様に私は消え失せる 熱い舗装に抱かれていると早く我を殺して世界 世界の前で死ぬ朝をまつ夢の中で別の結末を開けてゆく セロハンテープで直された紙夏雲の如き怒りを映しつつそのまま私を赦さずに…

からたち

待つ事は爆音の中で眠ること 信じてはならぬこの音楽を待つあいだ音楽は鳴るかるがると ひかる音楽よ鳴るのを止めてからたちのように雨には棘があり白い花が咲く 眠そうな君つんつんと雨が尖って避けがたき体温の雨 未だお静かに胡桃の木の褐色の肌理 すべす…

石の足

夜の霧につつまれるべき さきざきにうす紫に染むグラフィティ北京から電話は遠い 壊れゆく時は丘のようになだらか隠しいる嗜好はこの血 眼を細めしずかに絆を断ち切るときのまだ降らぬ雨に待たれているのなら濡れに行こうか 石の足もてなぜ音がするのか夜は …

回り道

家に帰る酷い瞬間 洗剤の満ちた鞄から手を放したい帰り道を真水のごとく揮発させ想像の中に消えゆけ我が家帰り道は一つのあはれ ふわふわと青い小鳥が煙を吐いて二度とここに戻らぬように 液体は土だ 南と描かれた扉

千の夜

永遠に子どもだつたらどうしよう 月光に青虫の這う緑の尻で呼ぶ声は決して来ないと思ふこと せめて夜啼く小鳥がいれば爆音の中で目覚める夜明け前 知らないの赤い帽子の君を繰り返すフレーズ 匂いの染み付いた明日の目覚めは涙に似てる爆音の中でなければ眠…

夢喰い

いつまで私が必要とは訊かぬ しずかに蟹の眠る水槽銀色に輝く卓に牡蠣の身が引き出されるとき背を傾ける幸せであるかのような鏡を見たき 大理石の暖まる間眠りから滑車は出でぬ 桃色の光るキャタピラが廻る夢からある眠りは突然に来たかのようで麻酔の如くあ…

高温

痛みのないからだでいたい 生ぬるい海の匂いをゆっくりと嗅ぐ綿毛飛ぶ春は久しく 桜花舞う南国の道にかがみこむのみ高温の半ば桜の枝はあり やがて刈られる麦畑見ゆ

ふるえつつカタバミを踏む朝が来て後悔のように夜景は消える円卓の温かい皿に注がれる雲を見ている 開きゆく貝扉絵の向こうは北方 大人びた兄妹が部屋で眼を閉じている幻想は唯一繰り返される昼 あかるきビルははたと倒れる外灘の石壁が底冷えていて 踊ろう…

三寒

コケモモのやうに微かな繊毛を光らせており雨夜のビルは歩いているあいだは夢をみるじかん トレンチコートを百舌の様に着る春風がざわざわと鳴り黒塗りの盆のごとしも 夢見る池はスイッチを入れるとかたり 思い出のような音して暖まる部屋