岩宿

温めている一瞬は分からなくなっているのかのやうな白い貝

現実は言葉のようにひび割れる 酢はき粗目の舌が黙すまま

あじさいの歯が欠けている 灼けていく果肉の如く寝る美術館

ただいまと云えば真水が流れ込み 黒い内張りの岩をひたしぬ

彷徨の如く書物がやって来て 青いをとこのように眠る岩

岩窓はわたしの住み処 岩肌に入れずにあり物質を覗く