杉田協士「犬星展」

杉田協士氏の「犬星展」を見に学芸大学へ行く。


映画を撮っている彼の写真は、映画と同じように人へのまなざしへの「意識」に満ちている。
街中を流れる人たち、立ち止まる人、子供の後ろ姿をとらえるショットはあくまで暖かな光に満ちている。しかし私は、そこに「何気ない街の風景」ではなく、何気ない街の風景を見ている私の「視線」の側に立ち、傍観者のようにしかし暖かく他者に溶け込んでいる私達のありようを、さりげなく写し取っている彼の意図を感じる。

映画・写真・書籍と様々なメディアを用いて、複層的に積み上げられる物語とイメージが、作者本人のパフォーマンスと一体化し表現として成立することは、虚構と現実を操作しつつ、歌人というイメージを含め「表現」としてきた和歌・短歌のありかたとも重なる。それは最近、webから発生した幾多のアーティストが、自分のキャラクターや生活・交友を含め一つのスタイルとして提示し、鑑賞者の関与を誘っていく状況とも近似する。いまや著名なアーティストであれば、当然のごとく自身のHPを持つ時代、webで何を発声するかということは、表現の一部として無視出来ない。このような前提条件を意識している作品が、今の時代を表すものだと思う。