Venice

ひたひたと海面が迫りくる夜はわたしはわたしの迷いを思う

激流は暫く無かった 一瞬でYesと言った雪崩の後は

引き潮の後はことばが続かずに雲雀のような我等の隠語

そろそろと触れてくるやうな親しさを閉じ込めておく海下の街に

黒塗りの芸術家よ架上にて地上の劇場を再現す (ヴェネチアビエンナーレ、独逸館)

わたくしに二つの名があり時たまに新姓を記す事を守り居る

我々の言葉以外のものがあり玻璃の花瓶は泣き出すわたし

『塔』2011年10月号掲載歌

『塔』2011年10月号掲載歌です。

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ゆつくりとこの世の別れをしたのかい   まだ違う、さらに違うと云いぬ

夕暮れはいつか始まるものなのか 終わつた後の凪ぐテリトリー

夏が来て大きくなる木を背にしよう ためらいはむしろおまえのために

灰色の眼をすることは夏山を滑り落ち行く少女の仕草

山羊の眼となり観るがいい 夕暮れに涙し夜は戦うひかり

穂村弘「短歌ください」

穂村弘の「短歌ください」を読んでいたら、以前も紹介した2008-11-15 - 曇3年前の投稿歌が載っていてびっくり。
 

短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)

短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)

海鮮のカロリーメイトを喰らう夜半 乾いた口に時間が溜まる