Venice

ひたひたと海面が迫りくる夜はわたしはわたしの迷いを思う

激流は暫く無かった 一瞬でYesと言った雪崩の後は

引き潮の後はことばが続かずに雲雀のような我等の隠語

そろそろと触れてくるやうな親しさを閉じ込めておく海下の街に

黒塗りの芸術家よ架上にて地上の劇場を再現す (ヴェネチアビエンナーレ、独逸館)

わたくしに二つの名があり時たまに新姓を記す事を守り居る

我々の言葉以外のものがあり玻璃の花瓶は泣き出すわたし